周術期等口腔機能管理とは?手術前の歯科治療の必要性や内容を解説
2025/07/20

こんにちは、武蔵中原の歯医者、中林デンタルケアークリニックです。
医療の進歩に伴い、がんや心疾患といった大きな病気に対しても、高度な手術や薬物治療を受けることが可能な時代となってきました。
しかし、医療技術を駆使したとしても、治療を受ける患者さんの体調や生活環境が異なれば、治療の経過も異なります。
「周術期等口腔機能管理」とは、そのような背景の中で注目されるようになった、医科と歯科が連携して行う取り組みです。
周術期等口腔機能管理がなぜ大切なのか、どのようなことが行われるのかを解説します。
周術期とは

「周術期」は、手術を受ける前後の期間を指す医学用語です。
手術の直前から術後の回復までを含むこの期間は、術前は全身の状態を整えるための準備が行われ、術後は感染を防ぎながら回復に向けた経過観察やケアが続きます。
その間に口の中の衛生状態や機能に問題があると、予期せぬ合併症の発症や治療の遅れにつながってしまうリスクがあるため、健康管理が非常に大切な時期といえます。
口内環境が全身に影響を与える理由

口の中は、食べ物を取り入れる入り口であると同時に細菌が住み着きやすい場所でもあり、歯周病や虫歯がある場合、そこに潜む細菌が血流に乗って全身に運ばれてしまうリスクがあります。
例えば、心臓の手術を受ける患者さんが歯周病のまま手術に臨んだ場合、口の中の細菌が原因で感染性心内膜炎という合併症を引き起こすことがあります。
周術期等口腔機能管理で行われること

術前から術後の健康リスクを減らすために、歯科医師や歯科衛生士が患者さんの口腔内をチェックし、必要な治療・ケアを行うのが周術期等口腔機能管理です。
治療開始前には、虫歯や歯周病の有無を確認し、必要があれば治療を行います。
入れ歯の状態を確認したり、しっかりかめるかどうかをチェックしたりすることもあります。
また、手術後には誤嚥性肺炎や感染症、術後の回復遅延を防ぐために、口腔内を清潔に保つためのブラッシング指導や、唾液の分泌を促すマッサージ、舌や口唇の体操などが行われることもあります。
周術期等口腔機能管理の具体例
口内のクリーニング

スケーリングやPMTCといった術前における口内のクリーニングは、細菌感染のリスクを軽減するために行われます。
これらは、歯垢や歯石を物理的に除去することで、口腔内の細菌の総数を抑える働きがあります。
患者さんが入院中の方の場合には、ベッドからあまり動き回れない場合でもできるだけ口内を衛生的に保てるよう、ベッドサイドでオーラルケアをするための工夫やセルフケア方法のアドバイスも行われます。
感染源の除去

周術期等口腔機能管理では、炎症所見のある歯の抜歯や消炎処置、食べ物や歯垢が溜まりやすい状態にある虫歯でできた穴の処置なども行います。
これは、周術期の中でも特に術後にセルフメンテナンスが難しくなる可能性が高い場合に、事前にリスクをできる限り低減するための処置です。
周術期等口腔機能管理の流れ

全身麻酔下での手術や化学療法、放射線療法の開始日が決まると、主治医との連携のうえで歯科医師や歯科衛生士による口腔ケアが施されます。
具体的な内容は患者さんによって多少異なりますが、現在の口腔内の状態を検査したうえで、クリーニング、ブラッシング指導、詰め物・かぶせ物・入れ歯などの調整が行われることとなります。
一般的には、手術や治療を受ける病院の歯科で周術期等口腔機能管理を受けることが多いですが、遠方に住んでいるなど通院が難しい患者さんの場合には、患者さんのかかりつけの歯科医院と連携を図って処置やケアを行います。
術後においては、患者さんの健康状態や手術内容に合わせて口腔ケアが施されます。
また、救急医療の現場では緊急の気管挿管が行われることが多く、その際には長時間にわたり口が開いた状態が続きます。
これにより口腔内が乾燥し細菌が繁殖しやすい環境となるため、口腔内を常に観察し、必要に応じて歯科衛生士による口腔ケアや保湿を施すことで、誤嚥性肺炎などのリスクを軽減しています。
周術期等口腔機能管理の対象になる患者さん
周術期等口腔機能管理の主な対象は、がんの手術を受ける方、心臓や肺の大きな手術を予定している方、高齢で栄養状態が不安定な方など、全身の健康状態に細心の注意が必要な患者さんです。
また、骨折などで長期入院が予想される高齢の方や、糖尿病などの持病を持っている方にも周術期等口腔機能管理が行われることがあります。
病院の中でのチーム医療としての役割

周術期等口腔機能管理は、歯科医師や歯科医院が単独で行うものではありません。
主治医を中心としたチームに、歯科医師や歯科衛生士が加わり、それぞれのメンバーが情報を共有しながら患者さんの治療にあたります。
手術予定日に合わせて口腔ケアのスケジュールを調整したり、抗がん剤による副作用に対してどのような口腔ケアが必要かを医師と相談したりといった連携が求められ、チームとして患者さんの健康管理を行うことで、よりリスクの少ない手術や治療が可能にしています。
患者さんにとってのメリットとは
周術期等口腔機能管理によって手術の前後に専門的な口腔ケアを受けることで、合併症のリスクや口内の不快感、副作用が生じるリスクを軽減することができます。
また、誤嚥性肺炎などのリスクが下がることで、術後の回復もスムーズに進みやすくなります。
唾液分泌の促進や義歯の調整により食事がしやすくなれば、栄養状態が良好に保たれることで免疫力も向上し、感染症に対する抵抗力も高まります。
まとめ

一昔前までは「何か問題が起きたら行く場所」であった歯科医院ですが、近年は「問題を起こさないために行く場所」という認識が広まってきました。
周術期等口腔機能管理もその考え方に基づいた例であり、口腔内の状態を整えておくことで、手術後の感染症や合併症のリスク軽減を図っています。
口内トラブルの中には、歯周病のように全身の健康に影響を与える疾患もあります。
口内環境を整えておくことで、もしも病気やけがで大きな治療を受けなければならなくなった際にも、そのリスクを軽減できるようにしておきましょう。
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